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基本は自分用の備忘録

【凋叶棕】報の感想

告知初見時に「しらせ」と思いきや「むくい」で、アレッこれ闇の凋叶棕じゃないの、と歓喜したがそこまで闇ではなかった(当社比)。

ジャケットからしてギンギラに楽園への花道を突き進んでるからね、間違いない。表記と読みを両方把握しないと実態が分からない伝統芸。

 

 

タイトル:報 <初回限定生産盤>

No:RDWL-0032

頒布:第十八回例大祭

 

テーマは「欲望」。

 

初回限定生産盤のせいなのかボーカル的なアレなのか、凋叶棕としては過去最高額で大コインよんこ。(Feuille-Morte名義のファンタジアが大コインろっこ相当で超大物。あっちは薄い本もついてきたけど。共通するVo.から察するのが正しいかどうか……)

善きにしろ悪しきにしろ因果応"報"のアルバムのため、欲望とその報いが基本セット。

テーマからすると神霊廟が入ってきそうだが、佐渡の二ッ岩アレンジのインストがあるだけ。しかもあんまり欲望とか報いとかという方向でもない。もちろん永夜の報いとかもなし。あくまで最初と最後の依神姉妹がメイン。

 

 

外観

 

ジャケ絵はギンギラの金箔押しにお立ち台で踊る女苑。帯まで金箔。ジャケット裏面は表面を背後から見た感じに女苑のシルエット。

一方のブックレット裏表紙はグレースケールな暗い絵面に膝を抱えた紫苑。CD外したジャケット裏の裏面(?)も同じく紫苑のシルエット。対照的。

しかしこれが「欲望」と「報い」で表裏一体、というわけでもなく、それぞれ個別で「欲望」と「報い」のセットをお持ちなのでタチが悪い。「最凶」と「最悪」の二人ではなく「最凶かつ最悪」の二人ゆえか。

 

ジャケ絵のアイテムはそれぞれボーカル曲に対応している。

観自在~ : 1.カネと楽園とエゴイスト。般若心経。

狂時計酒樓: 2.Bloodless Gleaming。狂時計と書いてルナ・ダイアルと読む。

Love&Fairy: 4.Fairy Disease。凋叶棕に限らず、東方における妖精はPeaceとは程遠い好戦的存在の気がするけども。

5th idola  : 6.孤独のイドラ。「孤立無援が誂えた造形神」イドラデウスから、種族・洞窟・市場・劇場に続く第五のイドラは孤独という解釈。

CASINO   : 8.ラストオカルトファンタジー。サイコロ的にも某キャノンボール。これ怒られるやつや! ei magiaとか考えると今さらだけど!

千客万来  : 10.Greedy Girl。歌詞にも出てきている。

倒福    : 11.しあわせのかたち。本来の「福が落ちてくるように」という縁起のいいマークからさらに左右反転しているので、不幸が落ちてくるのでは?

 

CD表面はヒメジョオンとハルジオン。そしてテンションMAXの英文。

Let’s GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO

 

 

 

ボーカル7曲、インスト4曲。

ファーストトラックとラストトラックにコンセプト曲、間に補完曲のいつもの構成。

 

1.カネと楽園とエゴイスト

原曲:今宵は飄逸なエゴイスト(Live ver) ~ Egoistic Flowers.

Vocal:棗いつき Lyrics:RD-Sounds

 

うるせーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!

出オチからの出オチ。1曲目でこれかよ!

すさまじいテンションとパワーを持つ。さいきょうのM01の名は伊達じゃない。曲調はなんかバブルバブルしてるけど裏で般若心経が流れ始めたりするカオス。命蓮寺、力及ばず。

 

シビアな価値観が前提にあるのは見せつつも、やりたい放題やっていてたいへん心地よい。楽園(はめつ)に向かう道筋なのが分かり切っているけど避けられない疫病神。

Downfalling Ideoloyを思い出す甘言。さながら誘蛾灯のごとく。 

 

これは金銭欲ではない。カネが欲しいわけではなくカネを使いたいわけで。

なんだろう。散財欲が正確?

 

ところで声がめっちゃかみ合っている。解釈一致です。

今回一番のお気に入り。

 

 

2.Bloodless Gleaming

原曲:月時計 ~ ルナ・ダイアル

Vocal:めらみぽっぷ Lylics:RD-Sounds

 

アロロロロ x 月光照らすはシリアルキラー

つまり2通りの意味でR-18なかんじ。性欲というべきか愛欲というべきか。

 

タイトルはおそらく「ナイフは血の通わない金属」という花映塚での発言より。

しかし「輝き(ナイフ)」が血に塗れるほどに「輝き(星、あるいは金髪の魔女)」から血が失われていくという見方をすると、"Bloodless Gleaming"は曲中でナイフから魔理沙に入れ替わっていく、とも読める。

 

報いは魔理沙を失うことか? かなり都合のいい殺人者の思考だけど。

 

 

3.Lovely/Easing/Wholesome/Distractive

原曲:年中夢中の好奇心

 

愛くるしく/気楽で/健康的で/注意力散漫な(妖精たち)。

三妖精にこのピコピコ感は珍しい気がする。

 

頭文字をとるとわいせつな感じになるので、まあつまり次の曲の語り手視点かなという。

 

好奇心。知識欲? 妖精に知識って印象はあんまりない。

 

 

4.Fairy Disease

原曲:真夜中のフェアリーダンス

Vocal:めらみぽっぷ Lyrics:RD-Sounds 

 

前曲の妖精たちを陰ながら見守るYesロリータNoタッチの妖精病患者によるオサレラップ。

と書くと最悪だが、実際はめらみらっぷがうまいのでかっこいい感じになっている。ファンタジアのファントマっぽい声の出し方。

 

珍しくこじらせ奴が何もしないまま終わる。描かれているのは独占欲だが、その欲望の部分だけ描かれていて報いがない。欲望に従った行動自体は起こしてはいないからか。

 

見つかったらすーぱーなちゅらるとりっくわーくすよろしく一回休み待ったなしだった……あるいは一回休みになったお兄さん=この妖精病患者なのか。すーぱー(ryの裏を描いたと思われるSupernatural Encounter(インスト)も直後の from the corpse to the journey(ボーカル)と一続きらしい雰囲気があるので、形式には共通点があり、5曲すべて繋がっている可能性が見いだせる。その場合、今回の2曲が欲望、過去の3曲が報いに対応する。

 

EasingとDiseaseで対比させているかと思ったけどよくわからず。一応、語源は同じ。

 

 

5.夜は短し稼げよものども

原曲:佐渡の二ッ岩

 

和ものの妖怪感のある曲だけど、ウェットな方向ではなく楽しげな雰囲気。

でもマミゾウさん、タイド・コラプションでかなりブラックなことやってますよね……。喩の楽曲は実際には起こりえないネタであると考えれば、逆に安全性が担保されていると言えなくもないけども。

 

どうしても祭囃子っぽさを感じる。ので、イメージは夏/夜。

 

中盤で曲調が切り替わる。とはいえどちらも"ものども"が稼いで回っている感じで、欲望/報いという対応ではなさそう。これは金銭欲担当な気がする。

 

 

6.孤独のイドラ

原曲:偶像に世界を委ねて ~ Idoratrize World

Vocal:めらみぽっぷ Lyrics:RD-Sounds

 

6面ボスにふさわしい神性マシマシのカリスマ曲。

 

輝針「セイギノミカタ」並みのかっこよさだけど話が抽象的で若干難しい。

<Ⅰ>から順に種族・洞窟・市場・劇場・孤独のイドラを指した歌詞。

<Ⅴ>の孤独のイドラに関してはそもそも存在しない概念なので、解釈が個人でかなり分かれそう。

 

並ぶ者なく孤独なのは埴安神自身であって被創造物ではないので、孤独のイドラを持つのは埴安神自身のはず。しかし歌詞の「孤独のイドラ」部分の視点は埴安神っぽい。つまり、創造主ゆえに「創造」を"あくまのしょぎょう"だと思うことが埴安伸のみが持つ"いつつめのさだめ"なのか?

あるいは埴安神は孤独な人間に第五のイドラを見出していて、それについて言及している?

わからない。ついでに何の欲なのかもよくわからない。創造欲?

 

 

7.甘きゲヘナの誘い

原曲:パンデモニックプラネット

 

ギリシャ語とキリスト教の面からみると、ヘカテは冥府の女神であり、冥府とはタルタロスのこと。ゲヘナは地獄。

が、ヘカーティアは「地獄の女神」という二つ名なので、紺珠伝の時点でそもそも元ネタ通りというわけではない。

 

目の前で今すぐ地獄行きを是とするほどの甘い誘いはだいぶ無茶な文脈用意しないといけない気がするけど、すなわち生前のあらゆる欲望に対する最終的な報いとして機能するのがゲヘナということではなかろうか。

地獄(あるいは冥府)の主たる某閻魔様も「望」でただ善く生きよと言っている。

 

今回のカネと楽園とエゴイストもしあわせのかたちも(あと「逆」のDownfalling Ideoloyも)堕ちる誘いが巧みだったが、みんな個別のケースを描いていて、かつ現世で欲望と報いが完結していた。

それらに比べるとこれは死後の報いであり、概念及び宗教寄り。

 

 

8.ラストオカルトファンタジー

原曲:ラストオカルティズム ~ 現し世の秘術師

Vocal:nayuta Lylics:RD-Sounds

 

ザ・物欲。虹色の☆5宇佐美。

 

初の光の宇佐美かと思いきやダメダメすぎて闇(?)だった。いやこれ本当に闇って言っていいのか? 現代の闇か?

 

毒の方向性としてはまんまei magia。あるいはDolls into Pitiful PretendersとかDefiler(s)とかsomewhat trustworthyみたいなメタ系とも言えなくもない。が、内容が圧倒的にやっっっすいあたりさすが宇佐美。

 

零落しすぎて自身の特別性の証明をガチャに求め出すの、空しいがすぎる。ずっとユメマボロシノハナとか言ってるから自覚あるのは確かなんだろうけどうん。

ちなみに結局某CBには宇佐美は実装されず、☆5宇佐美=マボロシノハナでもある。

 

 

9.新世界の曙

原曲:有頂天変 ~ Wonderful Heaven

 

滅びを語ったうつろわざるもののイメージがどうしても強いので、そうすると新世界の曙って真逆やんという。

しかし実際に聞くとまあ曙ですねこれは。めちゃくちゃスケールがでかいのは同じ。まあ破壊と創造は欲望と報いよろしく表裏一体、因と果ではある。

 

有頂天変の高い空の印象と伸びのいい管楽器がとても合う。

 

しかしどのあたりが欲望なんだ……。

 

 

10.Greedy Girl

原曲:少女綺想曲 ~ Capriccio

Vocal:めらみぽっぷ Lylics:RD-Sounds

 

タイトルからして強欲。いや強欲って欲望か? 「五欲の巫女」に対応している感じではない。

 

ノーモア、エニモア?モアーモア?!とかなにいろ小径とかの頭が春寄りの霊夢。そこまでポンコツではないけど。一方で素の部分に /彁やname for the loveを思い出す真っ白そうなところがあってちょっと危うい。

妖怪退治を行う超人たる"博麗霊夢"ではなく、あくまで人間としての"霊夢"の存在を確立していく過程を描いた印象。博麗霊夢の"博麗"は巫女の面、"霊夢"は人間の面を示すイメージがある。"零で無"だった少女飛翔曲では元人間の妖怪みたいなナニカだったし。

 

「和幸奇」は一霊四魂における和魂・幸魂・奇魂のこと。それぞれ親・愛・智を司る。残る1つは荒魂で、これは勇=前に進む力を担当。押し進むこと、一歩一歩進むことのどちらも含む。まあこの霊夢は荒魂の働きは強そうなので、それ以外の三魂にも頑張ってもらいましょうということなんだろう。

 

かなり正統派に"少女綺想曲"という感じでとても楽しげ。

曲としては今回一番好き。

 

 

11.しあわせのかたち

原曲:今宵は飄逸なエゴイスト(Live ver) ~ Egoistic Flowers.

Vocal:藍月なくる  Lyrics:RD-Sounds

 

おもいっきりおかねをかけて

いっしょにしあわせになろうね

しあわせのかたちは人それぞれ。

紫苑の求める幸せは割と一般的な幸せ(若干語弊あり)だが、そのくせそれがなかなか手に入らない。貧乏神ゆえに。

という見方だとかわいそうなんだけど、実際聴くとこれはヤバい。幸せは自分じゃ手に入れらないから他人にどうにかしてもらおうという他力本願なエゴの塊。卑屈ではあっても控えめではない。「一生幸せにします」を要求してくるけど金が尽きたらポイ。貧乏は幸せじゃないので。貧乏神のくせに。

 

欲望に忠実かつ素直だが、それは叶うことなく、ただただ報いだけが積み重なっていく。が、その報いはポイしていくのでちょっとの悲しみと素敵な思い出だけが残る。無敵か?

まあこの歌詞でいう報いは欲望に対する天罰的な報いではなく、生きることに対する報酬的な報いであり、その報いを欲するのが欲望であり……という関係。

 

とはいえ言ってることは割と筋が通っているので確かにってなる。詐欺師の才がある。

幸せについて語っておきながらしあわせ(はめつ)を求めてくる。そしてしあわせまで堕ちきっても全く悪びれずに捨てる。しかし紫苑は「派手な服着て 楽しげに笑って 金遣いが荒そうなやつ」でなく分かりにくいぶんだけ女苑よりタチが悪い。生かさず殺さずの最凶最悪の悪女。

 

全部私に頂戴ね!

でもkawaii!!!!(しろめ)

 

ところで女苑も紫苑もかなり即物的な欲望なわけだけど、紫苑の場合は貧乏神ゆえに手に入らないからこそそれを"しあわせの形"としている。そして相手の幸せに対する認識も同じであるという前提で"いっしょにしあわせになろうね"。しかし同時に、ちょいちょい"私しあわせにしてね"も漏れている。つまりかなりエゴい。

一方の女苑は"世界は今 この現世だけだ"という思想を押し付けるための説得をしており、そして女苑自身だけの欲望は描かれない。幸せの一致を前提としている。ネゴがあるというべきか、エゴを貫き通すことだけを考えているというか。

 

 

 

以上、報の感想。

1年ぶりの新譜だけあって重たかった。紺珠伝以降さらっとしか触っていないのでかなり苦戦。久々に原作やるべきか。

 

トキノウタは単体でいろいろ考えられるほどの情報量がなかったので、後半というかメインというかの2枚目が出るの待ち。