1発目に入れるのかはどうなのかと思わなくもないコンセプトの1枚だけど、気にせず書いていく。
フォーマットは試行錯誤中。
タイトル:蒐
No:RDWL-0031
テーマは「蒐集」。
インスト中心の軽いタイプ。憩や趣と同じ大コインいっこ組。
過去作品で収録していない(できていない)曲を"蒐"めたアルバムのため、それぞれ元のアルバムのコンセプトを踏まえて聞きたいところ。
タイトルからすると鬼関連が入っていそうだが特にそんなことはない。「望」にセプテットが入っていなかったのと同じで、そういう解像度が下がるネタはやらないのかも。
外観
ジャケ絵は過去アルバムの要素全部乗せ。
タイトルの色合いで「屠」を思い出して若干の恐怖。
特設サイトのイラストとは少し異なり、ブックレット裏表紙とつながっている。
CD表面におなじみの英文はなく、31枚のCDを模した円。31枚目に蒐と書かれているため、RDWLナンバリングの各CDを表していると思われる。
3枚目、20枚目、29枚目が赤。17枚目、28枚目、30枚目が緑。
つまりそれぞれ「謡」「掲」「奏」、「求」「娶」「彁」。今回の収録元の6枚を指す。色分けの基準は謎。無意味ではないと思うけど……。
曲
ボーカル2曲、インスト6曲。
ファーストトラックとラストトラックにコンセプト曲、間に補完曲のいつもの構成。
1.コレクターズ・サーガ
原曲:恋色マスタースパーク
ジャケ絵でわかってはいたが、"蒐"めているのは蒐集癖のある魔理沙。
その性質を描いた過去の曲としてまず連想するのが、何もかもを欲しがる強欲性を暴いた「Kirisame Eversion」なので身構えてしまう。(歓喜の構え)
しかし杞憂だった。今回は光の魔理沙。
ペコポコした音からしてパステルカラーみのある曲調。のべつまくなし蒐集する雰囲気が見える。とても楽しそう。
2.月の歌
原曲:妖魔夜行/ほおずきみたいに紅い魂
Vocal:めらみぽっぷ Lylics:RD-Sounds
「娶」より
ルーミアとの駆け落ち曲。
月もないのに月がきれいですねと言ったらそりゃプロポーズである。
終わらない夜の何処までも
歌おうか月の歌
で〆なので、霊夢のインターセプトは失敗に終わり、彼は永遠の夜行に旅立ってしまった。「二色蓮花蝶」といい、報われない霊夢。
しかしこのまま喰われておしまいだと同じく「娶」の中の「meaning of life」と丸被りなので、"差し出された手を取った"というプロセスを経ているのもあり、相思相愛的なアレだと思いたい。被るから「蒐」に入れました、だったら詰み。
そもそもの「(I'm gonna eat you up!)」を思い出せばバッドエンド以外ありえないとは言ってはいけない。
3.夜聞聞
原曲:永夜抄 ~ Eastern Night.
「彁」より
読めない。よぎきぎき?
明らかに「伝」の「狂言「夜聞」」(あるいはさらに元の外部提供曲である「夜聞」)ベースなのに、収録元は「彁」という謎。読めないって意味ではまさしく。
「夜聞」側の解釈が必要になるので、先にそこに少し触れる。「狂言「夜聞」」は、
・ブックレットのイラストが霊夢の後ろ姿
・歌詞の途中で
得体の知れない モノどもと
アナタは――
・歌詞が、聞こえぬもの⇒聞こえてこよう⇒聞きたい⇒聞こえると変遷
・歌詞のラストで
夜のほとりにひとり 咲き誇るものよ。
以上より、"霊夢に惹かれた何か"が、"霊夢を探し求めた"結果、"霊夢の元へたどり着いた"(ブックレットの場面)という、これまた「二色蓮花蝶」一歩手前的なストーリーに見える。
上記を踏まえると、「夜聞聞」とは"そういうストーリー(=「夜聞」)を聞くこと"であり、「彁」の
抱く幻想、抱かれる幻想。
で言うところの"抱く幻想"に属する曲とみるよりも、"霊夢が「夜聞」を聞く"として"抱かれる幻想"側に含めるという解釈でみると座りがいいかもしれない。
ちなみに、「伝」のジャケ絵は収録曲それぞれに対応するアイテムを散りばめる「蒐」に似た方式だが、「夜聞」に対応するのは紅白の紙吹雪と思われる。
4.溺符「夜光虫の唄」
「掲」より
「Farewell」以来のムラサ曲。
爽快アップテンポなあちらとは異なり、曲調も音も、非常にいかがわしい(?)仕上がり。*うみのなかにいる*
というか原曲が一般的船幽霊のイメージからかけ離れているせいで、こっち方面のアレンジはかなりレアな印象。船幽霊が日本の妖怪だというのもあってか和楽器が強く合っていて、いかがわしさを際立たせるのに一役買っている。
個人的に今回のインストで一番好み。
ちなみに、夜光虫というと蛍だのリグルだのを連想しがちだが、正しくは海中に生息するプランクトン(ノクチルカ)のこと。
5.目覚めの花
原曲:天空の花の都
「求」より
「求」というアルバムは、
テーマは「本能」。幻想少女の中でも、妖怪に特化した一枚として、彼女たちの“本能”について考えます。
という1枚なので、これはリリーホワイトの本能に関わる曲とみるのが素直か。
春告精であるリリーホワイトの本能と言えば当然、春の訪れを告げて回ること。タイトル通り、静かな序盤が芽吹き(リリーホワイトの目覚め)の、盛り上がる終盤にかけてが満開(春の訪れ)のイメージでかみ合う。ラストで一気に落ち着くのは"春の訪れ"の終わりか。
……「はるのおと ―同声合唱とピアノのための―」だコレ!
6.サプライジング・エンカウンター
原曲:夜だから眠れない
「奏」より
ネタ枠。
「怪奇!人形の館 迷い込んだ男の運命は…」の瞬殺されるパターン。
これこそがわたしにとっての――そうよ、わたしのすきなおと。
マヌケな人間(と書いて獲物と読む)が立てる物音のことか?
7.the Four Little Adventures
原曲:Romantic Children
「謡」より
アリス枠。
「謡」のテーマが「物語」なだけあって、起承転結の流れがある一方で、わくわく感もずっとキープ。
東方怪綺談のストーリーそのもの、魔界の旅を全体を表現している?
タイトルのFourは自機4人(霊夢、魔理沙、魅魔、幽香)のことか。旧作のストーリーまでは手が出せていないので、あまり立ち入った解釈はできない。ぐぬぬ。
8.コレクターズ・ハイ
原曲:恋色マスタースパーク
Vocal:めらみぽっぷ Lylics:RD-Sounds
――全部私のものだ!!
なんだかひさびさな突き抜けた光の魔理沙。
きらめいて楽しそうで、自分の信条のままに真っ向から、悪びれることなく貪欲に進んでいく。まぶしい。
しかしブックレットの表紙・裏表紙をつなげて考えてみると、"過去の凋叶棕アルバムをすべて"蒐"めた魔理沙"(=「蒐」ジャケ絵)を魔理沙が持っている、という図になる。ある種「テーマ・オブ・カーテンファイアーシューターズ」と同じメタ視点。我々は魔理沙だった?
ところで"集めることに意味がある"と考える魔理沙の思考、割とゲームプレイヤー気質。「しかしなにもおこせない」で主人公に置かれたことを(あっちは霊夢-魔理沙の関係性が本筋であることは置いておいて)思い出す。
以上、蒐の感想。
ボーカルは2曲だったが、過去アルバムとの関係性が強い特殊性から、総文量の割りになかなかカロリーを食う記事だった。
以降はざっくりナンバリングを逆走していくことになりそう。次がいつになるかわからないけど。